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【映画】「忌怪島」 高度な技術で作った世界の行き着く先は、異界か魔界か霊界か

※当然のことながらネタバレを含むので未読の場合には閲覧に注意されたい。

 

最新の「VR」や「メタバース」という要素と、伝承系怪談とが組み合わさるタイプのホラー。

最新技術と伝承系オカルトとがちぐはぐな感じだけど、それがまた恐怖につながる。

 

 

ざっくりとしたあらすじとしては…天才脳科学者「片岡友彦」(西畑大吾)が主人公。彼がその才能を買われ所属するVR研究チーム「シンセカイ」は、「忌怪島」という島をまるごとデータ化して仮想空間にする、メタバース化するという研究を行っている。

 

「シンセカイ」のチーフである「井手文子」(伊藤歩)に誘われ島を訪れた友彦。匂いや風すら現実であるかのように感じられる仮想空間を作り出したシンセカイのメタバースだったが、友彦がVRゴーグルを付けて仮想世界に入ると、一軒の浜辺の家に奇怪な女と男がおり、女が井手と友彦にも襲いかかってくる姿を目撃した。

 

現実空間に戻った友彦は、井手がすでに死亡していることを役場で知る。そして役場で偶然出会った「園田環」(山本美月)とともに、偶然たどり着いた霊能力者「ユタ」のもとを訪れることになる。

 

やがて仮想空間だけで起こっていた奇怪な現象は現実世界にも起こっていくことになる…というストーリー。

 

 

最新脳科学の行き着く先は、異界か魔界か霊界か?

 

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いきなり変な話になるが、自分が大人になったこともあるのだけど、いつの頃からか、「夜が恐ろしいものではなくなった」。いや、それどころか、「怖いってどういうことだろう?」というぼんやりした疑問がいつもある。ホラー映画を見るとだいたいそう。

 

昔は、正体がわからないオバケを怖がったものだし、「人が怖い系」の話だって身震いしたものだった。だけどいろんな経験をしたり、最新のテクノロジーが発展したことで、怖いものというのがどんどんいなくなってしまった。心霊写真はスマホが台頭してからとんと見なくなったし、怪談になるような「深夜」だって、街中ではコンビニが営業していて夜でも明るい。

 

スマホはどこでも電波がつながるから、よほどの山奥でもなければ圏外なんてそうそうない。ホラーにつきものとなる「緊迫感」が失われてしまった。

 

どれだけ怖い犯罪者でも人間であるならば、対処のしようがあるものだ。霊現象だと言い張るものは、脳が作り出した幻か、多くは勘違いがもたらすものだと解明されてしまう。そうやって、恐怖の構成要素は最新科学によって細分化され、それぞれが小粒になってしまっていたような印象があった。

 

しかし、そうして最新科学が発展した結果、とうとう本物の恐怖にたどり着いてしまったみたいなストーリーが、この「忌怪島」だ。

 

メタバースで島そのものをデータ化したところ、その島の怪異までもが結果的に解放されてしまった。(という表現が適切ではないのだろうけども。)

仮想と区別がつかなくなるのは人間の脳ではない

最新科学で脳と仮想現実をつないで、仮想現実と人間の脳がぐっちゃになるとか、仮想で起こったことが現実の人間の精神に作用してくるみたいな話は、そこまで珍しいものではない。

 

オカルトではないけど、SAO(ソードアート・オンライン)とかはまさに、仮想現実で死亡すると現実でも…というストーリーだし。

 

 

「攻殻機動隊」なんかもインターネット上の広大な電脳空間が舞台。

 

 

ホンモノに見えるけど実はホンモノじゃないっていうちぐはぐさって、実は人間にとって根源的な恐怖を呼び起こすものなのかもしれない。

 

この「忌怪島」では、仮想と現実とがごっちゃになる…というよりは、仮想現実のために極限まで集めたデータ、人の脳に蓄積されたデータが、ホンモノの怪異を”解放”してしまう、というストーリーになっている。これはなかなか良かった。

 

 

「イマジョ」が現実世界に現れたり、島に怪異が振りまかれようとするシーンは緊迫感もあってよかった。

怪異が爆発して「地獄になる」描写がなかったのは、ホラー作品としてはおとなしめな結末かな?とも思うけど、まぁそれやっちゃうとパニックホラー要素も入ってくるから上映時間的に厳しいか。

ちょっとそういう光景も見てみたかった。映画の盛り上がり的には。

登場人物は魅力的ではあるけども

 

ストーリーは上に書いたとおり、なかなか良かった…のだけど、残念だったのは登場人物の心情描写かなと思った。

 

主要人物である「シゲ爺」こと「新納シゲル」(笹野高史)の行動原理はわからなくはないし、「イマジョ」のエピソードもよかった。

 

…が、島の女子高生「金城リン」(當間あみ)がシゲ爺にそこまで入れ込む理由というのが微妙なところ。確かに正義感の強い女子高生ならまぁ、島のそういう風潮に反感を覚えて、シゲ爺に入れ込むこともなくはないだろうけど、ラストシーンであそこまでの義理を果たすだろうか?という疑問はある。

 

友彦と環が惹かれ合った理由というのも微妙なところ。ただここはその心情描写よりも、「え!?いつの間にかふたりともそっちの世界に…!?」の驚きのほうが大きいかもしれない。

 

「シンセカイ」のメンバーの面々は、正直ほとんど無個性に描かれてる。まぁ掘り下げるほどのエピソードもないんだろうけど、だとしたらちょっと人数多くね?ってところかな。キャラ立ちしないならリストラしろってのはまぁ視聴者の勝手な言い分ではあるかも。

 

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結論

 

見て後悔はしないと思う。ただし序盤は長い。