※当然のことながらネタバレを含むので、未読の場合には閲覧に注意されたい。
確かWeb広告だったかX(旧twitter)だったかの広告で見て購入したような気がする。
おそらくまぁ、イジメとそれに対する復讐みたいな話なんだろなと思って読んでいたのだけど、まぁ少し独自な展開もあり。
強すぎおじいちゃんはいじめっ子なんか怖くない
まぁまずざっくりしたあらすじから。
主人公「漆間俊」は、原因は不明ながら学校で5人からイジメを受けている。いじめている犯人は、「至極京」「久我大地」「円比呂」「右代悠牙」「千光寺克美」。タイトルの「十字架のろくにん」というのは、この5人に主人公を加えて6人ということだろうか。
当初こそイジメは俊に対する直接的な暴力などの単純なものだったが、俊のかわいがっていた野良猫が惨殺されたり、俊以外の家族…両親と弟が乗った車をわざと事故に合わせたりと、行動はエスカレートする。
この事故により弟は植物状態、両親は死亡してしまう。家族に危害を加えられた俊は、猟銃を持っている猟師の祖父の家に引き取られる道を選び、猟銃を盗み出していじめっ子への復讐を企てるが、祖父に見つかる。
祖父は、俊がたとえ猟銃を盗み出したとしても、いまの俊では復讐など到底実現できないと諭す。
祖父は実は旧帝国陸軍の軍人で、「北山部隊」と呼ばれる秘密部隊の出身だった。祖父は俊に対し、「ワシが鍛えたる」と、人を殺すための教育を施すことを宣言。
やがて高校生になった俊は、いよいよいじめっ子5人に対し復讐を開始するが…というストーリー。
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理由のない悪意は確かにあるが…
これはまだ1巻読了時点での感想なので、この後の展開によっては疑問が明らかになるかもしれないのだけれど。
この漫画の第一巻を読んで最初に考えたのは、「悪や悪意の源泉とはなんだろうか?」ということだった。
確かに、人間の中には超犯罪性向の人もいる。生まれながらに社会のルールや人との健全な関係を築くことができない、反社会的な性格を持つ人のことだ。いわゆるサイコパスと呼ばれたりもする。
また、実際に犯罪を犯して死刑などの刑罰を受ける人の中にも、たとえば報道で見ると「こりゃどうしようもない悪人だな」と感じる人もいることは否定しない。
しかし、理由のない悪意というのは実はかなりレアケースだと思う。たとえば、反社会的な生き方が生業のヤクザと呼ばれる人々だって、別に生まれながらに悪人だったわけではあるまい。多少粗暴であったとか、他罰的・他責的だという者はいるだろうけど。大抵の場合、犯罪性向は幼少時の環境に影響すると思う。
つまり貧困や親との関わり、周囲の大人との関わり、場合によっては先天的な疾患などの場合もあるだろう。パターンは様々だろうけど、犯罪につながるバックボーンが形成されていない人には、明確な悪意などなかなか持てないようにできているのが現代社会だと思う。なにしろ、社会・学校・周囲の大人・創作物などあらゆるものが「善」を教えるのだから。
なのだけど、この「十字架のろくにん」に登場するいじめっ子、中でもリーダー格の「至極京」は、明確な悪意を持っているように見える。本人が語るところによると、「何不自由なく生きてきた人間が、誰かのためや何かのためではなく、理由もなく人を害する」ことが「一番すごい」と考えているようだ。
彼がいかにしてこのような価値観を持つに至ったのか、今後明らかにされるのかはわからないが、この至極京の哲学は、「家族のため」として人を害そうとする俊との間の良い対立軸であるといえるかもしれない。
とはいえ、なんの理由もなく人を害することがはたして悪意なのかというのは、ちょっと禅問答みたくなるかもしれない。
それと、俊が人を害そうとすることを「家族のため」や「善」と位置づけることにも議論はありそうだ。「悪であっても遂行する」「自分は(家族を奪われた恨みという)自分のために悪になる」という立場のほうが潔いかもしれない。
こういうのはダークヒーローだから、まぁそうしちゃうとキレイすぎるか…?
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「北山部隊」直伝の技術は復讐を成功させるか?
さて、復讐を結構しようとしていた俊だったが、最初にターゲットとして選んだのは千光寺。一見すると人畜無害そうな男だが、昆虫や動物などを「道具を使って」害するという、まぁよくいるタイプの「弱いものに対しては残虐」なタイプの男だ。
復讐の前段階として、俊は千光寺が「変わっていない」(つまり、反省していない)ことを確認しようとする。しかし千光寺は、当時の行為を土下座して詫び、俊の目の前でトラックに轢かれそうになった猫を身を挺して守るなど、明らかな「改心」の様子を見せた。
それによって決心がゆらぎかける俊だったが、まぁ大方の読者の予想通り、これは罠だった。千光寺に捉えられ拷問を受ける俊だったが、一瞬の隙をついて形勢を逆転、いよいよ反撃を開始するであろうところで1巻は終了する。
2巻はおそらく凄惨な復讐が開始されるのだろうが、相手は5人いる。「北山部隊」直伝の技術は、いじめっ子たちに通用するのか、そして復讐は成功するのか。
楽しみでもあり、多少不安にもなる1巻だった。