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【映画】「ワンス・アンド・フォーエバー(We Were Soldiers) 地獄の戦場で記者は何を見たか

※当然のことながらネタバレを含むので、未視聴の場合には閲覧に注意されたい

 

初見はずいぶん昔。たしかビデオ(懐かしのVHS)…だったかな?

 

ハチャメチャの戦争を描く映画によくマッチするメル・ギブソンが主演。

 

 

なお、原題は「We Were Soldiers」なので、外国のサイトとかで検索するときはこちらで検索すると見つかるだろう。

 

 

ベトナム戦争というアメリカ痛恨の歴史

 

 

この「ワンス・アンド・フォーエバー」で描かれているのは、アメリカ痛恨の歴史ともいえるベトナム戦争の序盤。実話をもとにした映画となっている。

 

というのも、原作者の「ハル・ムーア(役名同じ)」は実際に、この映画で描かれている「イア・ドラン渓谷の戦い」に従軍している。また、登場人物の一人であるUPIのジャーナリスト「ジョー・ギャロウェイ(役名同じ)」も原作者の一人。つまりこの映画は、実際に二人がイア・ドラン渓谷の戦いで経験したことを題材として描かれているといっていいだろう。

 

まぁまず大前提として、「ベトナム戦争」ってなんなのさ?って話。この戦争、「ベトナムとアメリカが戦った戦争」「アメリカが勝ちきれなかった戦争」ぐらいに考えている人も多いと思うのだけど、かなり歴史上重要な意味を持つ戦争だから、さわり(核心)の部分だけでも理解しておくといい。

 

ベトナムは、19世紀に阮朝ベトナムがフランス帝国の植民地となった歴史を持っている。日本の古い資料ではベトナムのことを「仏領インドシナ」と表記されているのはこのため。このあと、1900年代に入るとベトナム内で民族主義運動が高まったことにより、日本へ留学生を送り出す運動や、ソビエト連邦との接近など、水面下で独立に向けた動きが強まっていた。

 

その後、1939年に第二次世界大戦が勃発、1940年にフランスがドイツに敗北してドイツ軍の占領下に置かれることになるわけだけど、その際に現地フランス植民地政権とともに親独政権である「ヴィシー政権」が成立する。ドイツと同盟関係にあった日本政府は、日本がベトナム(’インドシナ)の領土保全をするという名目で進駐を行う(仏印進駐)。

 

なのだけど、進駐した日本陸軍が越境してしまったことでフランス軍と衝突してしまい、日本軍はフランス軍を追い出し北部インドシナに進駐することになる。

 

時局が進み1945年に日本がポツダム宣言を受諾し、日本軍は降伏する。この日本軍降伏をラジオで聞いていたのが、かの有名な「ホー・チ・ミン」。「ハノイ・クーデター」と「ベトナム独立宣言」を経て、ハノイを首都とする「ベトナム民主共和国(北ベトナム)」が樹立され、共産主義国家建設を目指すことになった。しかしこれは、ベトナムが南北に分かれて同族で争うことを意味していた。南ベトナムは連合軍、特にフランス軍管理下とされた。

 

この後、いわゆる「冷戦」を経て、1950年に朝鮮半島では朝鮮戦争が勃発。いわゆる「代理戦争」で、アメリカとロシア・中国との戦いがそれらの国以外の舞台で展開されることになる。

 

そして時代は進み1953年。南側につくフランス軍は「カストール作戦」を実施。ラオス国境に近いディエンビエンフーを占領して要塞を建造しようとした。しかしここでフランス軍はベトミンからの熾烈な攻撃を受け、降伏することになる。これが「ワンス・アンド・フォーエバー」の冒頭で描かれているシーンだ。

 

フランスを支援してきたアメリカでは、1961年にジョン・F・ケネディが大統領に就任。対ベトナム政策として派兵拡大を決定。1964年の「トンキン湾事件」、「北爆」を経て1965年には南ベトナムの「ダナン」にアメリカ軍海兵隊が上陸、1965年には、「ワンス・アンド・フォーエバー」で描かれる「イア・ドラン渓谷の戦い」が行われる。

 

まぁざっくりこのような背景を知っておくといいだろう。

 

アメリカの論理としては、北ベトナムが増長することは世界が共産主義化することにつながり、それを阻止するためには南ベトナムを支援するしかないということ。それが結局ロシアや中国を牽制することになるというわけで、結局朝鮮戦争と同じことをやっている。しかしベトナムでは、航空機を使ってナパーム弾、クラスター爆弾、枯葉剤(ダイオキシン)をばらまいたり、「サーチ・アンド・デストロイ作戦」を背景とした虐殺事件が発生したりと、なかなかに鬼畜なことをやったうえ、延べ250万人の派兵、5万以上の戦死者を出したあげく、結局戦争目的を完遂しないままに撤兵することになってしまったのである。

 

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ベトナム戦争らしさが描かれた映画

 

さて、アメリカにとっては(おそらく)太平洋戦争以上にいろいろな感情を巻き起こす戦争であったためか、ベトナム戦争を扱った作品は多い。

 

「プラトーン」は有名だけど、実は「ランボー」にも深い関わりが描かれているし、このブログでも取り上げた「フルメタル・ジャケット」もそのひとつ。基本的に爽快感のない展開であるのが特徴だ。

 

yamanekolynx-box.hatenablog.com

 

 

フルメタル・ジャケット (字幕版)

 

 

「ワンス・アンド・フォーエバー」も同様に、「この局面では勝ったけど…」というような結末になっている。

 

なにより、戦術的な勝利を得るためにどれだけの犠牲や損害が出たのか、どれほど困難な戦場であったのかというところが強調されているのがこの映画の特徴。

 

見通しの悪いジャングルで、坑道を使って縦横無尽に駆け抜け、あらぬ方向から集中砲火を浴びせてくるベトナム軍、増える一方の負傷者、とうとうヘリまで落とされてしまう…と、なかなかに絶望的な戦況だ。

 

しかし、アメリカ軍がベトナム軍に対して劣っていたわけではない。(まぁ当然だ。アメリカ軍なのだから。)

 

ベトナム軍の兵士は基本的に「AK-47と手榴弾」と報告されているように、歩兵用の小火器。一方アメリカ軍は、ヘリによる輸送・後送体制もあり、迫撃砲・火砲による砲撃支援、照明弾、空母・基地航空隊による爆撃支援もある。

 

 

ヘリは輸送だけでなくロケット弾による攻撃支援も可能だ。普通に考えれば、アメリカ軍に負ける要素はなかった。地形とベトナム軍兵士の士気の高さを考えなければ、だ。

 

迫撃砲が加熱して小便で冷却するシーンや、誤爆による味方兵士の悲惨な姿、戦線が崩壊して敵味方が入り乱れるシーンなどは、まさに「ベトナムっぽさ」を感じるシーンだった。

 

なお、そんな地獄的な状況の中、M16すら持たずに個人携行の拳銃だけで堂々と突っ立って生き残る「ベイジル・プラムリー上級曹長(サム・エリオット)」がヤバすぎる

 

ギャロウェイが見たもの

 

 

軍人ではなく、「UPI通信(報道機関)」の記者として戦地を訪れたジョー・ギャロウェイ(演:バリー・ペッパー)は重要な登場人物だ。しかし、ギャロウェイは最初「単なる記者」の一人だったわけだが、戦場に長くい続けた結果、他の軍人と遜色ないレベルの貫禄を身に着けてしまう…まぁそれはいいか。砲撃にビビらなくなってたのが印象的だった。

 

ギャロウェイが見たものというのは、必ずしも視聴者(一般市民の視点)と同じではなく、戦場にいる兵士一人ひとりの存在だったのだろうと思う。

 

ギャロウェイが話した直後の兵士(ジミー・ナカヤマ上等兵 演:ブライアン・ティー)が、チャーリー・ヘイスティングス中尉(演:ロバート・バグネル)の座標伝達ミスによる誤爆で瀕死の重傷を負うシーンは印象的だった。

 

兵士は兵士だが、家に帰れば家族の一員。このテーマは、ハル・ムーア(演:メル・ギブソン)を銃剣で刺突しようとしたベトナム軍兵士が手帳に妻の写真を入れているところにも共通のものを感じる。

 

「カスター将軍とは違ってた」って?

 

これ、地上波で一回放送されたとき、カスター将軍のエピソードがカットされていて憤慨したことがあった。劇中でカスター将軍のエピソードが紹介されないと、せっかくのプラムリーのセリフが意味不明になってしまう。

 

カスター将軍というのは、アメリカのインディアン戦争(1622年~)に従軍した「ジョージ・アームストロング・カスター」のこと。南北戦争で功を立てて出世したのだが、インディアン戦争で戦死した。

 

このカスターのエピソードがわざわざ「ワンス・アンド・フォーエバー」で登場するのには理由がある。それは、カスターが率いていた騎兵隊が、この「ワンス・アンド・フォーエバー」でハル・ムーアが率いている「第7騎兵隊」の祖(名前がね)という趣旨。ちなみに、現代では役割的な意味合いを引き継いで、ヘリコプター部隊や装甲車部隊に「騎兵隊」という呼称を与えることがある。ハル・ムーアの部隊がヘリ部隊なのに「騎兵隊」なのはこのため。

 

カスターが戦死したのは、インディアン戦争の「リトルビッグホーンの戦い」。カスター率いる700名の騎兵隊は、リトルビッグホーン川周辺に集結していたインディアン部族、1500名と見積もる集団を攻撃することを計画、副官からは「慎重にいきましょう」と諫言を受けていたにもかかわらず、部隊を3つに分けて急襲、無謀な突撃を敢行した。

 

しかし、インディアン側は実際には1800名以上の人員がおり、なおかつカスターの部隊の動向を斥候により事前に察知していた。そのため、カスターが分けた部隊はすぐにインディアン戦士たちに包囲されて身動きがとれなくなり、完全に敗走。カスターも戦死した。

 

ちなみに、ただでさえ数的に劣勢だった部隊を3つに分けたため、カスターが直接率いていた部隊はたったの208名だったという。

 

このあたりのエピソードは、このブログで過去に「ブラックホーク・ダウン」の記事で紹介している。

 

yamanekolynx-box.hatenablog.com

 

まぁ、カスターとは違っていたね。

 

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まとめ

 

ベトナム戦争の勉強には向かない(言及されていないことが多すぎるため)が、ベトナム戦争当時、兵士たちはどのような環境で、どんな戦場を経験したのかということに思いを馳せるにはよい映画。

 

ただし、この映画を見てアメリカ軍の各部隊が「最終的には勝ったんだ」と思ってしまうと若干歴史からは離れてしまう。

 

これはあくまで、「うまくいった方の事例」だ。うまくいってこれだけの犠牲なのだから、さらに悲惨な部隊の運命は推して知るべし、だ。

 

ともあれ、ベトナム戦争の歴史に関心のある人は見て損はしない。見るべし!