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【映画】「きさらぎ駅」 わけのわからなさが都市伝説の正しいカタチ…か。

※当然のことながらネタバレを含むので、未視聴の場合は閲覧に注意されたい。
ネットで未だに伝説級の扱いを受けている「きさらぎ駅」。
それに要素を追加した感じの映画かな?と思って視聴してみた…のだけど、元の話を知っている人は、「別物」として見たほうが楽しめるかなという感想。
 
きさらぎ駅

きさらぎ駅

  • 恒松祐里
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原典の「きさらぎ駅」は、見知らぬ駅で降りてしまったという人物(はすみ)が携帯電話から2chに書き込んだことが発端で、その場所が「きさらぎ駅」。
実際に存在する駅の名前や時刻などから、そこそこリアリティがありつつも「どこだそこ?」というわけのわからなさ、次に投稿者が発した地名が「比奈」というのも不気味だった。
ここは実在の地名だけど、新浜松駅から遠州鉄道で比奈に到達することはない。もし行くとしたら海沿いになるし乗り換えが発生するからね。
現実と異界がどちらも微妙にあり、「神隠し」に今まさに遭いつつあるけど、その本人と遅延混じりのリアルタイムな通信ができている。その「ちぐはぐさ」が絶妙に怖い都市伝説だったわけだ。
 

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確かに元の話は映画映えはしない

 
まぁコレ。
あくまで掲示板越しで文字ベースでの物語なので、ビジュアルで伝える映画にはもともとあまりマッチしない要素ではあった。
 
映画版のきさらぎ駅は、「きさらぎ駅に行ったが生還した」人物から話を聞くところからスタートする。そもそもにして生還できているのだから、この話はこの時点で、元の話とは別物と考えたほうがいい。
 
別物の話として考えた場合、まぁ複数人が「きさらぎ駅」という異界に放り込まれ、そこで次々と命を落としていくという要素は、ホラーとしてはありそうなモノ。
 
ただ、あえて到着したきさらぎ駅が「昼間」の描写だったのは…うーん、これも見栄えの問題かなぁ。元のきさらぎ駅の話では、周辺に「民家一つ無い」場所だということだから、周辺は真っ暗だろう。そう考えるとビジュアルで恐怖感を伝えるには光源が必要になるし。
 
「映画映え」のためにストーリーを既存のものから大きく方針転換したと考えれば、まぁこれはこれで、という感じ。
 

ちょっと要素が多かったかな

 
どれだけ「ネット上で流行ったきさらぎ駅とは別物の話です!」と主張してみたところで、「きさらぎ駅」という名前を冠してしまっている以上はどうしても比較されてしまうのはやむを得ないだろう。
 
そういう視点で見てしまうと、
・原典の「きさらぎ駅」が投稿されたのは夜中→映画では昼間
・人家などが何もない山間の無人駅→周辺に民家はあるが無人
・きさらぎ駅に降り立ったのは「はすみ」一人→たまたまその電車に乗り合わせた複数人
・はすみは車の人物に連れられてどこかへ→謎の怪物に襲われて死んでいく登場人物
 
と、これだけ違いが出る。
 
あとタイムリープの要素が入っていたり、生存者がなぜ生存しているのかといった要素が最後に付け加えられたりする。
 
きさらぎ駅含む「異世界」で出会う人々も、原典では「いるだけで怖い」のだけれど、映画だと襲ってくる。これはもうゾンビやん、パニックホラーに全振りしたほうがよかったんでは説まである。
 
たとえば、「異世界で怪物に襲われる話」なら、パニックホラーに振るほうがよかったし、
「タイムリープで全員生還ルートを目指す話」なら、タイムパラドックスを重視するほうがよかったし、
「怪物の正体を暴いて生還を目指す話」なら、謎解きや霊能者・超能力者タイプが必要だった。
 
要素が多すぎてちょっとどれも中途半端になったかなーって点は残念。
 

生還する人物の「秘密」は良かった

 
当初、きさらぎ駅から生還できた人物と、できなかった人物、その違いがなぜ生じたのかという点について、最後に説明があったことで、納得感はある。
 
この説明を聞くことで、どちらかというとこの映画で最も怖いのは人間の悪意だということになってしまうわけなんだけど、ここは意表をつかれたかなという感じ。
 
複数人の登場人物がいることが、ここで生きてくるかぁという点はよかった。
確かに宮崎明日香(本田望結・演)だけがその場にいたら明らかに不審だもんね。
 

都市伝説はもともと「わけのわからないモノ」だという割り切り

 
ちょっと視点を変えてみると、「きさらぎ駅」は現代怪談であり、言い換えれば都市伝説に近い。
常光徹氏の著作「学校の怪談」では、いろいろな都市伝説についても触れられているのだけれど、都市伝説に共通するのって、ある種の「わけのわからなさ」なんだよね。
 

 

※「学校の怪談」や「都市伝説」などを考察する常光徹氏の著作、ホラー好きには満足の一冊。

 
たとえば、冗談みたいな話だけど、走って車に追いついてくる「ターボばあちゃん」なんて話があるけど、もう存在する理由から何から一切意味不明。わけがわからない。だから「怖い」。
 
この映画「きさらぎ駅」で、線路をとんでもない勢いで追いかけてくる爺さんを見たとき、真っ先にこの「ターボばあちゃん」のエピソードが頭に浮かんだ。
 
あとは都市伝説の一種として、「口裂け女(口蓋裂の患者様のことではない)」とか、まぁ「トイレの花子さん」なんかもそれに含めていいと思うのだけど、「なんだかわからない」ことが多いために、「怖い」と感じるのが都市伝説。
 
その考え方に沿えば、この映画「きさらぎ駅」も、そういう「わけのわからなさ」を楽しむ話であるともいえる。なんで爆発するねん。
 
元の話を知っている人も知らない人も、一度は見てみてもいいのではないかな。