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【漫画】絶望集落(1) 人には猿に対する根源的な恐怖が?

※当然のことながらネタバレを含むので、未読の場合には閲覧に注意されたい

 

 

 

Kindleストアを眺めていて気になったので閲覧。

 

「集落」という名前がついてはいるが、たとえば「ガンニバル」に出てくるような舞台ほどさびれた集落というわけでもない。

 

ガンニバル 1

ガンニバル 1

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ざっくりとしたあらすじとしては…

 

寂れた商店街と、巨大な商業施設の「モール」が併存する町が舞台。まぁ地方都市の近郊にある町村、ぐらいのイメージだろうか。登場人物は基本的に高校生が主体となるのだろう。

 

中でも、代々マタギの家系である「鶴田」の家の女子、「鶴田知海(ともみ)」が重要人物といえそうだ。

 

冒頭では、遠野物語に登場するという、猿の幻獣「経立(ふったち)」に関する授業がある。

 

※ちなみに遠野物語の中でも、第45話に「猿の経立」の話があるようだ。

 

この経立は、銃が効かず、「色を好む」…つまり女を襲うというおぞましい伝説として伝えられている。

 

学校ではそんな話をしていたところ、知海と祖父は山で女性を保護する。女性の様子は「乱暴された」ような状態で、彼女が言うには、「家族は猿に食われた」のだという。

 

病院に保護された女性と知海の証言から、警官・婦警・知海の祖父の3人が事件現場である山の奥深くへ調査へ赴くことに。そこで彼らが目にしたのは、女性と家族が乗ってきたと思われる車の中で、明らかに「食い殺された」様子の男性の遺体だった。

 

尋常ではない様子の遺体と、知海の祖父が感じ取った「ケモノの精液の臭い」に一同に緊張が走る。そして樹上には、それを見下ろす猿の大群が…という流れ。

 

パニックホラーとして考えると、「猿」はかなり厄介かもしれない

 

なんらかの生物が暴走してしまい、町や学校、島などがパニックに陥るというタイプの「パニックホラー」は、いろいろなジャンルがある。

 

まぁ代表的なのはゾンビで、「バイオハザード」シリーズや「ドーン・オブ・ザ・デッド」なんかが有名だと思う。

 

バイオハザード

バイオハザード

  • ミラ・ジョヴォヴィッチ
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他にもこのジャンルは人気が高いようで、たとえば「飛行機が不時着した島は、太古の獣が生息する島だった」というストーリーなのが、「エデンの檻」

 

 

 

渋谷の街中に唐突に現れる「金魚」に人々が襲われていくのが「渋谷金魚」

 

 

 

「エデンの檻」と同様に飛行機が不時着するが、そこは巨大な「蟲」の巣窟だった…というのが「巨蟲列島」

 

 

 

というように、生物や状況には違いがあるが、特定の生物に人間が襲われるという展開の漫画は意外と多いということがわかる。

 

まぁ映画だとヒッチコックも有名だろう。「鳥」や「キラービー」なんかが思い浮かびやすい。

 

鳥 (吹替版)

鳥 (吹替版)

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こうしたパニックホラー系は、当然人間を襲ってくる生物は厄介なのだが、たとえばゾンビの場合、空を飛んだり海を泳いだりは「基本的に」しない。

 

なので、強固な壁や鎖で守った拠点と遠隔攻撃ができる銃があれば、比較的動きの遅い「普通のゾンビ」であれば人間側が生存できる可能性が高い。

 

「蟲」はなかなか厄介だが、図体の大きな蟲だとは言ってもやはり蟲だ。動きに制限のある蟲も多いし、火、殺虫剤などまぁ弱点もそこそこ思いつく。まぁ、多種多様な蟲が相手だと人間側はかなり不利だろうけども。

 

そのような視点で考えてみると、「猿」が集団で人間を襲う、というのはかなり厄介な状況かもしれない。

 

猿は人間ほどではないが手先が器用で、ジャンプもでき、素早く、かつ社会性もあって、なおかつ人間よりも筋力が強い。おまけに少々の壁なんかでは簡単によじ登ってくるだろう。

 

動物園の猿はよく管理されていて、「逃げ出すメリットがないからその場にいる」というだけの話で、外の世界のほうが暮らしやすければ、猿山から脱走することはおそらく不可能ではない。(たいていの場合オープントップだしね)

 

一応国内でも、野生化したニホンザルが好き放題やっている事例はあって、さすがに人間が殺害されたというような事件は記憶にないが、噛まれたりひっかかれたりすることはある。あと農作物や家畜への被害だ。

 

しかし、この「絶望集落」では、そんなものではない。なにしろ直接的に人間を害しようと襲ってくるのであり、なおかつ、女性に対しては「性欲」をぶつけてくるわけだ。

 

猿をテーマにしたパニック系の漫画は他にもあり、たとえば「さるまね」や「モンキーピーク」などが思い浮かぶ。

 

 

しかし、この「絶望集落」では、さらに猿に対して「性欲」というステータスを付け加えることで、より人間にとっての危険性と嫌悪感を掻き立てることに成功していると思う。

 

なんとも言えないが、もしかしたら人間には「猿」に対する根源的な恐怖心や嫌悪感があるのかもしれない。似ているようで違う部分とか、「人間らしく」見えることで不潔に感じたりする人もいるだろう。やまねこも実はそうだ。いや、可愛いけどさ。

 

2巻以降はさらなる悲惨な展開となりそう

 

1巻を読んでみて、感想を一言で言うと「これは酷い」(残忍という意味で)だった。

 

冒頭に出てきた女性のほか、※閲覧注意※ 事件調査に向かった祖父は腹をえぐられ死亡、男性警官は腕をもがれ、顔の皮をはぎとられて目をえぐられた挙げ句、尻から腸を引きずり出されて弄ばれた(おそらくその後死亡)。婦警は何百といそうな猿に囲まれひたすら犯されている描写がある。

 

また、山から降りてた猿に襲われた夫婦は、夫の眼の前で妻が犯され、そればかりか山から降りてきた鹿もその対象。また、知海の家に忘れ物を届けにいった男子生徒「三沢」も、危うく猿の餌食となるところだった。

 

1匹は知美が散弾銃で始末したものの、夫婦の家に侵入した猿は、警官の持つリボルバーでは撃ち倒すことができなかった。(口内からの射撃により駆除)

 

厳密には言及されていないものの、実際にヒグマでも同様に銃弾が通らないケースがあると言われていて、これは毛皮に脂が染み込み、極めて硬くなるためだそう。

 

射撃した警官は、「こいつらが町に降りてきたら、我々はどうすれば…」と一人不安を覚えるが、正しい懸念である。

 

そしておそらく、懸念はその通りになるだろう。猿は人の味を覚えたと見える。つまり、より多くの餌がいる場所…町に降りてくる可能性が高い。そして、この町は地方都市の悪い部分である「モール一極集中」が起こりやすい地域だ。

 

つまり、大量の餌が無防備にウヨウヨしているモールは、彼らにとって理想の「狩り場」となるのだろう。

 

おそらく2巻は、モールでの戦闘が主なテーマになるのだろう。
続きが楽しみなような、あるいは読むのが怖くなるような、複雑な感情を呼び起こさせてくれる第1巻だった。