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【漫画】「少女不十分」(1) 小学生に誘拐された作家のタマゴは真相に辿り着けるか

※当然のことながら、結末が大事な漫画だけどネタバレを含むので注意。

サスペンスっぽい雰囲気のタイトルと表紙の絵で選んで購入した一冊。

 

事故現場で少女が見せた「不自然」

 

[出典]:https://pixabay.com/photos/recorders-whistle-4815035/

 

主人公は作家志望の大学生。作家志望というだけあって文章を書くのは早いものの、まだ本格的に作家となれるほどの芽は出ていない、そういう「そこそこ文章が得意な、どこにでもいる学生」の範疇だろう。

そんな主人公はある日、街中で小学生がトラックに轢かれる場面を目撃する。二人いた小学生のうち、事故に遭ったのは一人。

もう一人の少女は無事だったが、事故に遭った同級生の少女に駆け寄る「前に」、手にしていた携帯ゲームを「セーブして」、「カバンに仕舞って」いたという場面を目撃してしまう。

主人公はその少女の行動に動揺するものの、本業である大学に行く。しかし、通学用自転車の後輪に「リコーダー」が挟まれている。リコーダーといえば小学生。不穏な予感を覚える主人公だったが、帰宅した際にカギを紛失していたことに気づく。鍵屋に解錠してもらいようやく自室に戻ったところで、机の下に潜んでいた「あの少女」と出会う。

 

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少女がこだわる「順番」の不気味さとその理由

 

さて、机の下の少女は主人公に彫刻刀を突きつけ、少女の自宅へと連れ帰る。

逃げようと思えば逃げられた主人公だったが、少女の境遇への興味と、その状況への好奇心から、少女の自宅へともに向かう。

そして少女は、玄関近くの「物置部屋」に主人公を監禁することになる。

こうした限られた少女との接点の中で、主人公はいくつかの少女の特徴に気がつく。

それが、「少女は順番に非常にこだわる」という点だ。

隣で同級生がトラックに引かれても、「ゲームをセーブして」、「ゲーム機をカバンに仕舞ってから」でないと次の行動には移らない。

少女が主人公のために学校から持ち帰った給食に、主人公が無言で手を伸ばそうとした際に、「いただきます」を言わなかったことに激昂する。

そして、主人公が自室で彫刻刀を突きつけられた際も、少女の最初の言葉は「初めまして」だったというわけだ。

一部の疾患では、「ものの順番にこだわる」という症状はある(強迫行為)。いわゆる自閉スペクトラム症の症状のひとつだ。意思伝達に質的な障害があることについても、この少女が「当てはまらないわけではない」。

しかし、この時点でこの少女が「何らかの疾患を抱えている」と断定するのは早計だ。もちろんその可能性もゼロではないが、少女の自宅がどのような環境か、そして主人公がなぜ、どのようにこの家に滞在しているのかという点に思いを馳せると、別の可能性が浮かんでくる。

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というのも、主人公は「少女が事故現場で見せた態度を知っている」。これは、「世間一般的には批判されるべき・奇異な反応であった」こと。

そして、少女が主人公を閉じ込めたのは「物置部屋」であること。これは、「親が子を閉じ込めるのにも利用できる場所である」こと。

主人公が「いただきます」を言わず食事に手をつけようとした際に、主人公をそのことで怒鳴りつけたこと。これは、自身がそうされたから他者にもそうしている可能性があること。

最後に、主人公が監禁されている少女の家には、少なくとも現時点において「両親がいない」こと。

これらのことを考えると、少女は精神的な疾患あるいは自閉スペクトラム症的な症状としての「順番へのこだわり」という考え方よりも、むしろ「そうするよう、必要以上に厳しく教育された結果」なのではないか?という可能性が浮上してくる。

 

次巻が気になる終わり方

 

この第一巻は、少女がどのような様子であるのか、少女のいる家がどのようなものであるのかという、主人公の目を通した分析や推測が主となる。したがって、この巻では少女の境遇や、なぜ主人公を監禁したのか、少女は主人公をどうするつもりなのかという部分については語られない。

情景や主人公の考察が大部分となるが、結論が出ないため、「結局どうなるんだよ!?」という思いになり、次巻が気になる。これはいい切り方だ。次巻ではもう少し事態が解明されることに期待しよう。