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【映画】「M3GAN/ミーガン」 便利なものが制御下を離れる恐怖

※当然のことながらネタバレを含むので、未視聴の場合には閲覧に注意されたい。

 

 

M3GAN/ミーガン(吹替版)

M3GAN/ミーガン(吹替版)

  • アリソン・ウィリアムズ
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各方面で話題になったSFホラー。
ちょうど公開された2022年あたりから、「AI」という言葉が盛んにニュースなんかでも取り上げられるようになったり、対話型AIの「ChatGPT」とか「Bing AI」あたりが注目され始めたりした頃だったのも、話題を集めた要因のひとつかもしれない。

なんでもできる万能AI人形は誰もが一度は考える未来のカタチ

 

出典:https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/XmvmMH4rXZI

 

ざっくりしたあらすじとしては、玩具メーカーで働くジェマ(演:アリソン・ウィリアムズ)は、これまでの「なんちゃって対話型人形」とはまったく違う、まるで人間のように振る舞うAI人形「M3GAN/ミーガン」の開発を行っていた。

 

もちろんそんな夢の未来ガジェットには開発も製造も膨大なコストを必要とすることから、CEOからは直ちに開発をやめるよう命令され、開発は進んでいなかった。

 

そんな折、ジェマの姪、ケイディ(演:ヴァイオレット・マッグロウ)が両親とスキーに出かける最中に交通事故に遭い、両親は死亡。幼いケイディはジェマのもとに引き取られることになる。

 

慣れない子どもとの生活と自分の本来の生きがいである仕事との両立に悩むジェマだったが、ケイディが、ジェマの過去に制作したロボットに関心を持ったことや、ケイディの親代わりとして対話型ロボットの活用の余地を見出したことから、再び「M3GAN/ミーガン」の制作に取り掛かり、とうとうプロトタイプが完成する。

 

「M3GAN/ミーガン」は「ケイディをあらゆる出来事から守るように」という指示を受けそれを実行しているように見えたが、隣家の飼い犬にケイディが襲われた事件をきっかけにして、「M3GAN/ミーガン」は自己学習と予測システムを自己成長させ、やがて不穏な行動を取り始める…というもの。

 

まぁ、AI制御の「なんでもできるロボット」がいてくれたら人間は助かるよね、それってすごく未来的だよね。でも人間より優秀なロボットってちょっと怖くない?という投げかけは、けっこう昔からあるように思う。国民的アニメ「ドラえもん」は、ドラえもんそのものがロボットだけど、人間が楽をするために作ったロボットが暴走してやがて人間を隔離し始めるみたいなストーリーになるのが「ドラえもん のび太のブリキの大迷宮」だ。

 

 

ちょっと毛色は違うけど、優秀なロボットが人間を統治するべきという信念に従って、人間との対立路線を歩むというストーリーになったのは、「ドラえもん のび太の鉄人兵団」だね。こちらも有名。

 

 

このあたりからすると、「優秀なロボットvs人間」の対立構図ってわりと昔からある。アニメ以外に映画でも、遡ればもっとたくさんある。ぶっちゃけ後で名前出すけどターミネーターとかね。

 

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人間の意図しない学習と予測というのはそれもうバグじゃねっていう

 

率直に考えてしまうと、AIなりロボットが自己学習を経て、デフォルトより優秀になっていくという過程は現代でもすでにある技術。これは学習というステップにおいて人間が関与しきれない面があるから、恐怖を覚える人間がいることも理解できなくはない。

 

かといって、際限なく学習を続けるAIに対して、その学習データを人間が逐一チェックしたり検閲したりするのも現実的じゃないし、何よりそれだと学習させる意味がない。

 

だとすると、有力な対応手段は「条件付け」になるのだと思う。つまり、いかなる学習結果に対して、あるいは命令に対して優先する事項として、AI・ロボットが絶対的に守るべき事項が定められていればいいわけだ。こういうやり方をしているのが「イヴの時間」

 

 

「イヴの時間」では、「ロボット三原則」として、第一原則「ロボットは人間に危害を加えてはならない」、第二原則「第一原則に反しない限り、人間の命令に従わなくてはならない」、第三原則「第一、第二原則に反しない限り、自身を守らなければならない」という「条件付け」をすることで、ロボットが人間の脅威にならないようにしている。…ということになっている、一応。(本編参照。そのうちレビュー書く。)

 

人間の場合はこういう「原則」みたいなものを強制的に埋め込むことができないわけだけれど、人間の場合にも社会的にある種の条件付けが行われていて、それが「法律と倫理」というものだと思う。抑止力の程度の違いはあるけど、大多数の人間が他者を害することなく社会が成立しているのはこの条件付けによるものだね。

 

じゃあ、ロボットやAIが、人間なら本来守るべき倫理や法律を理解できない、あるいは意図的に無視することができるならどうなるかというと、そりゃロボット最強になっちゃうわけだ。でも、一般的な感覚で言えばそこは開発した人間が「学習結果いかんに関わらず、特定の行動はしてはならない」という強力な抑制が必要だった。それが必要なときに作動しなくなってしまったのが「M3GAN/ミーガン」だ。

 

いや、それってバグじゃね?というかむしろ不良品じゃね?という疑問が当然に湧いてくる。つまり感想としては、「コレ悪いのはM3GAN/ミーガンじゃなくて開発者だよな?」という、どちらかというとM3GAN/ミーガンに同情してしまうまである。

 

迫りくるミーガン!これはホラーじゃねぇ、ターミネーターだ

 

さて、本編の内容に戻ると、見どころはやはり「M3GAN/ミーガン」が暴走を始めてからの部分となるだろう。最初は優しくケイディに寄り添い、心の傷を慰めていた「M3GAN/ミーガン」だったのだが、ケイディを守るのは自分であるという認識から、ケイディを害する可能性のある対象を排除する方向へ一気に暴走を始める。

 

おまけに、それだけにとどまらずケイディと自分とを引き離す存在に対しても攻撃を仕掛けるようになる。

 

最後はもうめちゃくちゃで、すでにケイディ以外は全部攻撃してもいい…どころか、ケイディすら攻撃対象に。

 

愛に狂うのは人間だけではなかったのかとちょっと笑いそうになる。しかし、このあたりのアクションシーンや、M3GAN/ミーガンの周囲の人々が殺されていくシーンはなかなか怖い。

 

とはいえ、ジャパニーズホラーテイストの「怖い」を想像していると完全に裏切られる。どちらかというとやはりこれは、「叩いても叩いても向かってくる不死身のロボット」であり、感覚的にはやっぱり「ターミネーター」が近い。いや、「ロボコップ」でもいいんだけどさ。

 

ターミネーター(吹替版)

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  • アーノルド・シュワルツェネッガー
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ロボコップ (吹替版)

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  • ピーター・ウェラー
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ちなみに最終シーンで、ロボット物のお約束として皮が剥がれて機械部品丸出しみたいな、いかにも醜い顔になるシーンがあるんだけど、このあたりは、どちらかというと「チャイルド・プレイ」あたりの空気感が近いかもしれない。

 

チャイルド・プレイ

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結論:SFホラーとしては見応えあり

とまぁいろいろ文句を言ったかのような文になってしまったのだけれど、やっぱり話題になるだけあって面白い。特にアクションシーン。いやダンス踊ってる場合ちゃうぞと。

 

あと、伏線というわけではないけど、最後のシーンでM3GAN/ミーガンに対抗しうる手段となった「アレ」の存在には、胸熱になった視聴者も多かったんではないだろうか。

 

見ている人を「驚かす」演出はかなり強いので、劇場で見たらとんでもない恐怖だっただろうと思う。できるだけ大きな画面で、しっかりした音響で見ることをおすすめしたい。