やまねこのたからばこ

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【漫画】「度胸星」(1巻) リアルさとワクワクさの両方が味わえる良漫画だった。

※当然のことながらネタバレを含むので、未視聴の場合には閲覧に注意されたい。

人類がとうとう火星へ進出し、着陸船「スキアバレッリ」と地球との間で交信をしていたところ、突如通信が途絶える。

 

火星着陸船の生き残りが見たのは、「謎の物体」がクルーもろとも着陸船、そして母船を破壊する様子だった。

 

そして、クルー救助のために地球では急遽、宇宙飛行士の公募が行われる。それに応募したトラック運転手「三河度胸」が主人公の物語。

 

 

三河度胸」っていうめちゃくちゃ厳めしい名前で、完全にイメージでは江戸っ子ぽいけんかっ早い奴か、漁師みたいな豪快な人かと思いきや、実はむしろ寡黙でド正直。背中で語る職人気質タイプの質実剛健なナイスガイ。顔は横山光輝三国志に出てきそうな歴史タイプのイケメンでこれまた好印象だった。

 

対するライバルポジション?の「筑前智」は、それとは真逆の性格で、よく喋る、機転が利く、自分で状況をコントロールする、ハッタリが得意と、むしろ派手なタイプ。軽薄に見えるけどしょうもない裏切りとかはしなさそうな、「エリートじゃないほうの優秀な人」。トリックスターというか、過去に泥をすすってきたからこその強さみたいなものがあるように思えた。

 

1巻の見どころはやっぱり、度胸の人となりや筑前の機転が光る面接と一次試験のシーン。市原茶々という女性もメインキャラ級の扱いで登場して、なかなか面白い展開に。

 

漫画としての面白さは、まずキャラクターが全員魅力的。メインキャラたちもそれぞれしっかり個性がありつつ、「人間らしさを感じない無敵系」みたいな雑なキャラが一人もいない。だからこそ「人間っぽさ」がリアルに感じられた。どんな人間でも動揺するし、動揺すれば変なことをしたり言ったりする。

 

モブはモブで、あー、一般人ならこうなるよね。という納得感のある性格になってる。度胸の母親と妹もなかなかいいキャラ。たぶん妹は度胸にキツくあたってるけど、それだけ心配しているからだろうなと予想。

 

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試験の描写については、「なんでその質問を?」「なんで試験でこんなことをさせる?」という、意図が一見わからない試験を行った理由が、メインキャラの考察と試験官の語りでしっかり回収されていくのが納得感があっていいと思った。

 

[出典]:https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/awYEQyYdHVE

 

作者がそういう意図を込めたかどうかはわからないけど、この漫画で描かれている面接と一次試験のキーとなっているのは、「自分の頭で考える」ということと、「一貫性」ということのように感じる。

 

面接で、「試験官から無茶な質問をされたらあいまいに答えずNoと言え」という筑前からのアドバイスに対して、度胸はミスではなく本心から「Yes」と答えてしまう。でもそのYesと答えた理由がしっかり自分の中で説明できるぐらいに一貫性のあるものだったからこそ、英語能力の得点は低かったのに面接を突破することができた。

 

モジュール隔離試験の描写では、筑前が「外が明るければこれは事故じゃないから試験は続いている」という説をメンバーに話した後に壁に穴を空けたところ、外は暗かったが、「それでもやはりこの状況はおかしい」と自分で考え、あえてメンバーにはそのことを伝えずに試験を続行し、合格した。

 

他の誰かがこう言っているから、他のチームはもう外に出ているかもしれないから、という「他に流されるスタイル」のメンバーは脱落していったし、「たぶん事故だろうから出てもいいだろう」「ここにいたら危ないかもしれないから出るのが正解だろう」という「希望的観測スタイル」のメンバーも脱落した。最後まで残ったのは自分の頭で一貫して考え抜いたメンバーだけだったというわけだ。

 

次巻では、一次試験合格組とさらなる訓練・試験が待っているようだ。一次試験合格組もなかなか一筋縄ではいかなさそうなメンバーばかりで期待できそう。

 

リアルさもありつつ退屈させず、ワクワクさせてくれて次が読みたくなる一巻だった。